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記憶の中ですら息苦しい、そんな思い出がある。

はっきりと覚えているわけではない。

なのにその事を思い出そうとするだけで呼吸が詰まる。

口が乾き胸が締め付けられる。苦しい。

死ぬのか。このまま死んでしまうのか。



不安に苛まれ病院へ行くと、白髪混じりの先生から

「残念ですが余命45年です」と言われた。

余命45年。

先生が放ったその言葉は鉄の塊となり私の額にぶつかった。

馬鹿な。そんなに長い余命があるものか。

先生は私の目を見つめながらガシガシと頭をかいた。

すると無数のふけが飛び散った。

汚い。床は先生のふけだらけだ。

「残念ですが、余命45年です。残念ですが…」

先生は壊れたテープレコーダーのようにその言葉を投げかけ続けた。

その度に言葉が鉄の塊となり私の体にぶつかった。



私はすべるように椅子から転げおち、激しく震えた。寒い。寒い。

先生はカルテ眺めながらガシガシ、ガシガシ頭をやっている。

しばらくすると先生の背後に立っていた看護婦が先生の椅子を回し始めた。

いつもの事なのか、先生はくるくる回りながら私に病状の説明を始めた。



看護婦は慣れた手つきで、時折「はっ」「ほっ」などと調子をつけながらと椅子を回転させた。

先生が回る度に声が大きくなったり小さくなったりする。良く聞き取れない。

何を言っているのだろう。お経のようにも思える。

先生はくるくる回りながら頭をかき続けた。

私は笑いながら天井を見上た。



床に寝転びながら天井を見上げると無数のふけが見えた。

回転する先生の頭からは次々とふけが散布され続けている。

まるでスプリンクラーのようだ。

ふけは落ちるのを嫌がっているかのように宙を漂っている。

はらはら、はらはら、ふけが舞う。

ふけ…いやこれは雪だ。



よく見るとふけではなく雪。

診察室は一面雪化粧。真っ白だ。

嗚呼…なんて綺麗なんだ。

一片の雪が私の頬で優しく融け落ちた。

遠くでタモリの声が聞こえる。

「明日もまた見てくれるかなー!」

その瞬間、私は昼寝から目覚めるのであった。
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●トナリグミ  ●Author→組長

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