一歩一歩バッターボックスに歩み寄っていく中、

私はチームメイトのマナブ先輩の事を考えていました。

マナブ先輩は、私より1つ年上の先輩です。

練習はかかす事なく参加し、私達と共に汗を流してきた仲間であります。

無口でしたが、ソフトボールに対する情熱には非常に熱いものがありました。

しかし、マナブ先輩はレギュラーではありません、補欠でした。

私とポジションがかぶってしまったからです。

予選を通じてまだ一度も試合に出ていませんでした。



私はバッターボックスへ向かいながら、ベンチの方へ振り返りました。

すると、マナブ先輩が私に向かって声を張り上げています。



「打てるぞぉぉ!!お前なら絶対打てる!!」



いつも無口な先輩だっただけに、余計に声が響く感じがしました。

この試合をマナブ先輩の最期の試合にするわけにいかない。

私は彼の想いに奮い立ちました。

私はマナブ先輩に向かって握りこぶしを突き上げ、バッターボックスに入りました。
 
 
 
狙いは初球。

まず間違いなく様子を見る為に投げてくるであろう外角のはずし球。

そこを狙う。

私は汗ばんだ手を再度ズボンでぬぐい身構えました。

ピッチャー越しに、ゆらゆらと蜃気楼が見えます。

ピッチャーは、ランナーを気にしながらゆっくりとセットポジションに入りました。
 
 
 
静まり返った球場に緊張が走ります。

次の瞬間、大きく弧を描いたピッチャーの腕から第一球目が放たれました。

ピッチャーから勢いよく放たれたボール。

外角の球を予想していた私はベース側に大きく踏み込みました。

しかし私の読みはずれてしまいました。

ピッチャーの投げた球はえぐるように内角をするどくついてきたのです。

「しまった」瞬時にそう思いましたが、すでに動き出していたバットは止まりません。

ボールは、極端に内角寄りです。

いや、内角寄りというよりむしろ、私をめがけて飛んできました。



私は、焦りました。

このままだと球が私の体に直撃してしまいます。

ああ危ない!


ズバンッ!!


激しい音が球場に響きました。

みんなが息をのみます。

ピッチャーから勢いよく投げられた球は、

私の内角をするどくつき、

そして、キャッチャーのミットにおさまることなく

私に当たりました。



球は私のおしりにヒットしました。

桃で例えるとちょうど割れ目の部分です。

はっきり言うとケツメドに直撃しました。

そしてその瞬間、

奇跡が起きたのです。




なんと球が私のお尻にはさまったのです。

桃で例えるとちょうど割れ目の部分です。

私は球をよけようとして、ピッチャーに背中を向けました。

球がお尻に当たったのと、お尻に力を入れたタイミングが見事に合致したのです。

ほんの一瞬の出来事でしたが、ボールは完全にお尻にはさまったのです。

当たった直後、キャッチャーがボールの行方を見失うくらいはさまっていたと思います。



ピッチャーが投げた球は、その日で一番走っていました。

そして私は、割れ目を押さえてベンチに走りだしました。

私は痛みで悶絶しました。

桃で例えると割れ目の部分です。




ベンチを見るとマナブ先輩は体をヒクヒクさせて笑っています。

僕はそんなマナブ先輩を見て

ああ、ソフトボールやっててよかった、と思いました。

私はこのデッドボールでチームを地区優勝に導く事ができました。



残念ながらマナブ先輩はこの後一回も試合に出る事なく引退しましたが

たまに学校で会うと必ずこのデッドボールの話で盛り上がるのです。

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●トナリグミ  ●Author→組長

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